【NFTロイヤリティ問題を徹底解説】OpenSea新発表の概要、Yuga Labs反発の理由、Blurとの関係をこれまでの背景と共に解説!
6,000文字超えのレポート!これを読めば全てわかります。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「OpenSeaのロイヤリティ廃止」のニュースについて解説します。
«目次»
1、OpenSeaがロイヤリティの廃止を発表
- OpenSea Operator Filter とは?
- OpenSea Operator Filter 廃止の理由と詳細
2、Yuga Labsの反発とOpenSea撤退
- Yuga LabsとBlurの関係
- オンチェーンロイヤリティ(EIP2981)とは?
3、NFTのロイヤリティ問題はどうなる?
OpenSeaがロイヤリティの廃止を発表
2023年8月17日、OpenSeaの公式ブログとXより「2023年8月31日を持って、OpenSea Operator Filterの廃止」の発表がありました。
この決定によって、NFTクリエイターが二次流通におけるロイヤリティ収入を強制できなくなりました。事実上、NFT業界全体においてNFTの二次流通におけるロイヤリティ収入がなくなる可能性があります。
これには賛否両論が巻き上がっており、特にYuga Labsは公式X上で反発を示しており、Yuga Labs関連のNFTのOpenSea撤退を示唆しています。
では、ここに至るまでの背景と詳細の変更内容を解説していきます。
※ざっくり流れが理解できるように解説するので細かいところは割愛します。正確な定義と少しニュアンスがズレる場合もあるかもしれないので、ご了承ください。
■OpenSea Operator Filter とは?
今回「OpenSea Operator Filter」が廃止されると発表されましたが、それによってロイヤリティが強制できなくなるというニュースになっているので、「OpenSea Operator Filter」を知らない方も、おそらくロイヤリティを強制するための機能だろうという理解はされていると思います。その通りです。
この機能は2022年11月にOpenSeaがリリースしたもので、クリエイターの二次流通におけるロイヤリティ収入を確保するためのものです。
この機能をリリースした背景は「Blur」を始めとしたロイヤリティを設定できないNFTマーケットプレイス及びアグリゲーターの盛り上がりです。
Blurはクリエイター側の意思とは関係なく、販売者や購入者がロイヤリティを設定できるようになっており、NFTの販売で少しでも多くの収益を上げたいトレーダーにとっては魅力的な場所となりました。一方で、NFTクリエイターにとってはロイヤリティ収入を得ることができなくなり、苦しい状況となりました。
そこでOpenSeaは「OpenSea Operator Filter」をリリースしました。この機能を利用しているNFTは、Blur等のロイヤリティが0%になる(クリエイターが設定したロイヤリティとならない)マーケットプレイスからブロックされ出品されないようになりました。
これによって、Blur等のマーケットプレイスには出品されなくなるので、流動性は下がるかもしれませんが、クリエイターのロイヤリティは守られた、、、かと思いましたが、Blurはそれを上回る改善をしてきました。
ここも細かい説明は割愛しますが、OpenSeaは2022年5月にNFTを安全に売買できる分散型プロトコル「Seaport」をリリースし、OpenSeaの基盤プロトコルとしても採用しました。Seaportは誰でもマーケットプレイスを構築できるプロトコルで、決済方法の多様化、ガス代の大幅削減などを実現します。
BlurはOpenSeaのリリースした「Seaport」を活用することで、ブロックされたOpenSea上のNFTをBlurに掲載することに成功しました。
結果、OpenSeaはこの状況をなくすには自社の基盤にもなっているSeaportを廃止する以外になく、Blurと和解し、BlurはOpenSeaのブラックリストから削除されました。
以降は、OpenSeaで売買される分にはロイヤリティがありますが、Blur等で売買される分にロイヤリティがつかないという流れとなっていました。
■OpenSea Operator Filter 廃止の理由と詳細
OpenSeaは今回の廃止理由に関して3つの理由を挙げています。
web3全体のエコシステムの理解が得られなかった
Seaportを利用して「OpenSea Operator Filter 」から逃れることを制限することは技術的に不可能なので、エコシステム全体でロイヤリティを守るように(=OpenSea Operator Filterの基準を守るように)調整する必要があったが、それは実現されなかった。コレクターとクリエイターからの反発
コレクターがNFTを購入すると一部のクリエイターからは、Operator Filter によってコレクションの販売先に対するコントロールの感覚が制限され、同時に完全な所有権に対するコレクターの期待と衝突する可能性があるという声が上がっていた。Operator Filterは完全な分散化を犠牲にするものだった。ロイヤリティ収入はNFTによる売上の1つに過ぎない
NFTを活用して新しいイノベーションを起こすことが目的で、例えば商品の引換券など、新しいビジネスモデルの開発にコミットしていける余白があるはず。
また、8月31日のOperator Filterの廃止によって以下のようになります。
8 月31日以前にOpenSea Operator Filterを有効にしたコレクション、およびすべての非イーサリアムブロックチェーン上の既存のコレクションは、2023年8月31日から2024年2月29日までのすべての二次販売にクリエイターの設定したロイヤリティを適用
8月31日より以降のNFTは、ロイヤリティが任意となり、
購入者がクリエイターの優先料金を含むセカンダリ リスティングを簡単に設定できるようになる
販売者がクリエイターの希望料金の選択や、クリエイター料金の支払いをカスタマイズできる
Operator Filterを適用していないNFTは、今まで通りロイヤリティは任意
以下のように販売者(=NFTを二次流通させる人)は、販売時にクリエイターのロイヤリティを設定できるようになり、設定画面の下にはクリエイターが希望するロイヤリティが表示されるようになります。
また、購入者はクリエイターが希望するロイヤリティを設定している二次流通のNFTだけをフィリタリングできるようになります。
なので、完全任意になりますが、ロイヤリティが設定されやすい機能は追加されるということです。
Yuga Labsの反発とOpenSea撤退
このOpenSeaの発表に対して改悪であると賛否が分かれていますが、最も影響力のある企業で明確に反発を示したのはCryptoPunksやBAYC等を持つYuga Labsです。
「NFTはユーザーが自分のデジタル資産を真に所有するものであると同時に、クリエイターに力を与えるものであり、Yuga は、クリエイターがその仕事に対して適切な報酬を得られるよう、クリエイターのロイヤルティを保護する」とコメントし、「すべてのアップグレード可能なコントラクトおよび新しいコレクションに対するOpenSeaの SeaPort のサポートを終了する」として、このプロセスは2024年2月に完了することを目指すとしています。
要約すると「Yuga LabsのNFTはOpenSeaには出さなくするよ!」という宣言ですが、ポイントはあくまで対象は”新しいコレクション”と”アップグレード可能なコントラクト”のNFTである点です。
ここで「アップグレード可能なコントラクトってなに?」という話に繋がります。ここを理解するにはさらに「Yuga LabsとBlurの関係」と「オンチェーンロイヤリティ(EIP2981)」の話に繋がります。
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